労働審判制度について

2週間のお休みをいただきましたが、いよいよ明日から当事務所も営業を再開いたします。

実質的に新年一発目のブログは、労働審判制度について書きたいと思います。

当事務所でお受けする相談の中には、労働紛争(使用者・労働者側を問わず)も相当数あります。
平成27年には労働審判を申し立てた案件もあり、このとき私は労働者側の代理人でしたが全面的に当方の主張が認められてご依頼者の方に満足していただきました(詳細は「お客様の声」参照)。

労働審判の制度概要については、こちらです。
私がここで書きたいのは、労働審判はこういうものです、とか、私は労働者/使用者の味方です、とかそういうことではなく次のようなことです。

①事案によっては、かなり早い解決が見込めて労働者にとっても使用者にとってもメリットが大きい

労働審判は、まず「早い」ので、この点で労使双方にメリットがあります。労働審判は申立から原則として40日以内に第1回の期日が指定され(裁判ではこのようなしばりはありません)、第1回期日から申立の内容に踏み込んで審尋が行われるので(民事裁判は少なくとも第1回期日は「訴状を陳述します」と原告訴訟代理人が言うだけで内容の吟味は行われません)、心情的・経済的に早く解決をしてもらいたい労働者にとっても、早く紛争解決して早く通常業務に戻りたい会社側にとってもメリットがあります。

②ニーズに応じた解決が可能である

労使紛争全般の紛争解決手段として用いることができ(守備範囲)、解決方法としてもかなり柔軟な解決ができるため(紛争解決)、この点でも労使双方にメリットがあります。

例えば、会社からされた解雇が不当解雇だとして争う場合でも、「会社に戻りたい」と主張することもできるし、「会社には戻りたくないけど解決金をもらいたい」と主張することもできるのです。

ただ、労働審判は時間に限りがありますから、事実関係に争いがあったり、事案が複雑な案件には不向きです。具体的には、残業代請求や解雇の中でも整理解雇を理由とするものは事実関係に争いがある場合がある場合が多いので(例えば、残業代だと「労働者が残業をした事実はない」とか「仮に労働者が残業をしていたとしても会社が指示していたものではない」とかなど)、労働審判での解決をするのは慎重な判断が必要でしょう。

③労働者側も使用者側も労働審判での解決を望むのなら、代理人を必ずつけるべきである

労働審判で解決する気があるのであれば、必ず代理人はつけましょう。

労働者側・使用者側に共通して言えることは、労働審判は時間がかなりタイトな上に期日前に相当な準備が要求されるということで、これは法律の素人には絶対に無理です。労働者の主張を第1回期日から全面的に受け入れる予定の使用者以外は必ず弁護士代理人を付けましょう。

①にも共通しますが、労働審判は労使紛争の迅速な解決を目的としています。もっと言うと、労働審判は原則として3回の期日の中での解決を目的としています。ですから、語弊を恐れずに言えば裁判とは異なって思いついたことを順次主張していけばいいものではなく、労働者側で言えば申立書にはポイントを踏まえて詳細な事情を書かなくてはいけないし、場合によっては期日の1週間前に会社側から出される反論書に詳細に再反論しないといけないし、会社側からしてみたらそういう詳細な申立書にこちらの詳細な事情を踏まえて反論したものを準備しないといけないのです。裁判で言う「擬制陳述」のような「時間がなくて準備できませんでした」的なものは許されないわけです(もちろん犠牲陳述をすることがいけないといっているわけではありません)。

また、②にも記しましたが、第1回の期日から申立内容に踏み込んだ審尋がされます。民事裁判での証人尋問ほどかっちりルールが決まったものではないにしても、裁判官や労働審判官からポンポン質問が飛んでくるのでこれに代理人のフォローなしで答えていって、裁判官や労働審判官を納得させるのは至難の技です。ドラマで放送されている裁判(証人尋問の場面が多いと思いますが)を専門家の助けなしでこなすことができるのかを考えるのが一番わかりやすいでしょう。

また、使用者にとっては、代理人をつけないと、中には不当に高額な解決金を要求してくる労働者もいる中で(確かに、労働局のあっせん手続よりも労働審判の解決基準のほうが格段に高いですが)、第三者的な視点で「それは違いますよ」ということができるのかというところもあるでしょう。

このように、労働審判には労働審判の特性があるものであり、専門家の関与が不可欠だと思います。労働審判を申し立てられた会社は法律事務所に相談に行くこと一択、労働審判を申し立てたいと思っている労働者もお気軽に当事務所に相談にいらしてください。

「心は熱く、頭は冷静に」をモットーに弁護士業務を行う弁護士若林侑があなた(もしくは貴社)のご要望を叶えます。