ブログの更新が滞ってしまっていましたが、今日は自転車事故についてお話させていただきたいと思います。
自転車は自動車に比べて免許も不要で子どもから大人まで広く利用されています。
しかし、他方で、それは様々な利用者が自転車に乗っているということですから、残念ながらマナーの悪い方も多く、自動車よりも事故が起きやすいということがいえるでしょう。一番危険なのは、歩道を猛スピードで走行している自転車、何列にも横に並んで走行する自転車、イヤホンをしながら運転している自転車・・・かなりよく見る法令違反運転の運転者だと思います。
自転車事故の特徴として、もう1つ。身体がむき出しの状態で被害者と加害者がぶつかるということから、被害が甚大になりやすいこと。最近では、小学生が自転車を歩道で猛スピードで走らせて運転していたところ、普通に歩道を通行していた女性に衝突し、(小学生の親が)合計で1億円近くの賠償責任を負ったという例も記憶に新しいところです。
では、自転車事故を扱う弁護士の業務として自動車事故と異なるところはどこか。
私は、以下の2点から、自転車事故の方が自動車事故よりも専門性は高い(素人がまともな交渉をするのは難しく、専門家に委任する必要性が高い)ものだと私は考えます。
①過失割合が類型化されていないこと
自動車交通事故を処理する実務家は、過失割合を考えるにあたって、必ず別冊判例タイムズ38号を利用します。過失割合が類型化されたものが事細かに掲載されているから、事件の方針について立てやすいからです。
しかしながら、この本には「自転車同士の事故」については掲載がありません。つまり、弁護士はその自転車事故を受任したら、極論を言えば、その自転車事故をどのような過失割合で見立てて行くのか一から考えないといけないのです。これは過去の経験や柔軟な思考回路によって考えていくものですから、どんなにリサーチ能力の高い方でもかなり難しいと思います。
自信のある方は、一度ご自分でやってみることをおすすめします。
②保険制度が整備されていないこと
これは、自転車事故事件の業務を扱うにあたって一番大変なことです。
自動車事故であれば、「自賠責保険」というのがありますから、後遺症が遺った場合なら、損害保険料率算出機構に後遺症認定の被害者請求をして、この料率機構の調査事務所が行ってくれる後遺症認定を待つ。そして、結果が出たら、その結果をもとに(自賠責保険基準に従って)まずは自賠責保険金の請求をして、それで填補されない分は任意保険会社に請求するという流れになります。
これに対して、自転車事故はどうか。
まず、後遺症認定手続については、損害保険料率算出機構のような機関はありませんから、被害者自身が(被害者側が)主張立証していかなくてはなりません。自動車事故のように機構に丸投げでは話が進まないのです。
そして、保険金の基準についても、自動車事故は最低保証額としての自賠責保険の基準がありますが、自転車事故にはないので、相手方保険会社はいわばフリーハンズな交渉(何の基準にも基づかない何でもありな交渉)をしてきます。これに一般の方が対抗するのは、交渉材料がないわけですから至難の業だと思います。私たち弁護士であれば、過去の裁判例から割り出した相場を具体的に示すことができますから、当然ながら対抗できます。
このように、自転車事故の処理は複雑ですから、被害に遭われた方は専門家への相談をお勧めします。
身近な自転車による事故だから、身近な法律家。きみさらず法律事務所までご相談ください。