調停の進め方

当事務所は家事事件が大半を占める手前、家事調停に同席することが多いです。

最近、調停の本質をよくわかっていないのではないかなと思わざるを得ない進行を希望されるご本人(相手方)や、場合によっては弁護士の先生(相手方)が多いような気がするので、私の意見をブログに残したいと思います。調停手続に関する考え方は人それぞれでしょうし、私と異なった考え方を批判するつもりは毛頭ありません。

まず、調停とは、要するに、裁判所を介した「話し合い」の手続のことです。

家事事件に限っていえば、身分に関する事件(離婚や養子縁組解消など)は裁判の前に調停手続を経ていなければ裁判を提起できませんし(調停前置主義)、その他の家事に関する事件(養育費や子の引き渡しなど)も家事審判のための証拠収集のために付調停手続にされる(家事審判を申し立てても、裁判所の判断で調停の手続にすること)場合もあるということで、家事事件においてはかなり重視されている手続です。

調停を進めることのメリットは、調停とは「話し合い」なのですから、両当事者が納得した解決が可能であることにあります。裁判所が第三者的に紛争を解決するよりも、当事者双方にとって納得度合いが高いからこそ、裁判所は調停手続を重視しているものだと考えられます。

費用も裁判に比べて格段に安いので、その点での裁判所の手続へのアクセスの良さも調停の魅力でしょう。

このような調停手続について最近私が思っているのは、調停が「話し合い」であることを失念している方が弁護士も含めて多くなってきているのではないかというところです。

「話し合い」はお互いの譲歩を前提としますから、何も譲るつもりがないのなら、言い換えれば相手方の提案に対して対案を出したり、歩み寄ったりするつもりが毛頭ないのならば、調停手続は無意味です。

「費用も安いし、調停を利用しよう」「調停を申し立てられてしまったけど、とりあえず出頭してみよう」という方々は、調停に出頭するならこの点をまず頭に叩き込みましょう。「この条件は譲れないけど、その分ここは歩み寄れるようにしないとな」と思わないと、双方当事者にとって時間の無駄です。もっと言うなら、「調停は続けてほしい。でも、どの条件も1ミクロンも相手に譲るつもりはない!」というのは矛盾挙動です。そんな話はありません。

そういう前提に立つと、全然応じることができない調停を申し立てられてしまった側の場合には、出頭しないか、即不調にしてほしい旨調停委員にお願いすること。調停を申し立ててみたけど全然話の折り合いがつかなそうなら家事審判への移行を調停委員にお願いするか、調停を不調にして人事訴訟を提起すること。これが一貫した行動というものです。

こういう調停の本質論や、調停に臨むときのあるべき態度を、双方当事者が理解している場合においては、調停手続は私はかなり有用な手段だと考えています。多くの場合、調停委員の先生方は、双方が折り合いのつくような条件を提示してくださったり、場合によっては当事者を説得していただいたり(説得されたり)できるので、調停委員の先生方にお任せしておけば自然と解決に向かっていることが多いのではないかと思っています。

もう一つ付け加えると、こういう調停の仕組みの問題から、調停になじむ種類の事件となじまない種類の事件があります。

あくまで一般論ですが、お金の問題(財産分与・慰謝料)を中心とする離婚事件や遺産分割請求事件は、「この辺で」という線引きがしやすく、双方当事者もお互いに譲歩しやすいので、調停になじみやすい事件といえるでしょう。

他方で、子どもの親権「のみ」が争いになっている離婚事件や、子どもの引き渡しに関する事件は、子どもの身柄は1つなので、「この辺で」という線引きがしにくく、話し合いと言っても、結局どちらかが勝者でどちらかが敗者という結論がわかりやすく出てしまうので、調停にはなじみにくい事件といえるでしょう。現実に、私もこの種の事件を扱っていますが、調停の段階で功を奏したということは一度も経験がありません。

どの手段も使い方ですよね。手続をちゃんとに理解して、適切な紛争解決ができる弁護士を目指します。